<労働基準>
●労災保険の見直し着手、メリット制などが論点
 厚生労働省は昨年 12 月 24 日、学識者による研究会の初会合を開き、労災保険制度の見直しに向けた検討に着手しました。今夏を目途に中間報告をまとめて労働政策審議会に報告します。主な論点とされるのは、受給資格要件に男女差がある遺族補償等年金や労災保険料のメリット制の見直しなどです。特にメリット制に関しては、令和5年1月末、通達によってメリット制による保険料増額に不服がある事業主に労働保険料決定において争う適格性を認めたことから、審査請求や訴訟等が増加する可能性があり、その対応などが検討課題となります。
 
●労働基準法等の改正に向けて労政審で審議開始
 厚生労働省は1月 21 日、労政審労働条件分科会を開き、労働基準法等の改正に向けて審議を開始しました。年内を目途に建議をまとめ、令和8年の通常国会に改正法案提出をめざします。この日は労働法等の学識者による労働基準関係法制研究会の報告書が示され、過半数代表制の基盤強化や連続勤務への規制、副業・兼業における割増賃金に係る労働時間通算の撤廃などが提言されました。意見交換では、副業・兼業に係る見直しに関して使用者側は賛同しましたが、労働者側は長時間労働を助長しかねないと反対しました。
 
<雇用>
●令和7年度の雇用保険料率は0.1ポイント引き下げ
 厚生労働省は1月 16 日、令和7年度の雇用保険料率を 0.1 ポイント引き下げ 1.45 %とする告示案を示しました。23 日の労政審で了承され、答申されました。雇用保険料率のうち、失業等給付費等充当徴収保険率を 0.1 ポイント引き下げ 0.7 %とし、育児休業給付費充当徴収保険率(0.4 %)と二事業費充当徴収保険率(0.35 %)は据え置きました。雇用保険料率が引き下げとなったのは 2017 年度以来8年ぶりです。なお、同様に農林水産・清酒製造業及び建設業の料率も 0.1 ポイント引き下げられます。
 
●就業規則等による教育訓練休暇が給付の要件に
 厚生労働省は1月 16 日、雇用保険の教育訓練休暇給付金に関する省令案を示しました。同給付金は、改正雇用保険法に基づき令和7年 10 月から施行される新制度です。被保険者が教育訓練の受講に専念するために休暇制度を利用した場合に、訓練期間中の生活費の支援として基本手当相当額を支給されます。企業に就業規則等で規定された教育訓練休暇のしくみがあることが受給の要件となっていて、施行日までに休暇制度の整備等が望まれます。同省の能力開発基本調査(令和5年度)によると、教育訓練休暇制度を導入している企業はわずか 8.0 %にとどまり、8割以上(81.9 %)の企業がい「導入する予定もない」と回答していました。
 
●求人広告に業務内容など6点の明示を求める
 厚生労働省は1月 22 日、求人企業などが求人広告等を通じて募集情報を提供する際、募集主の指名や業務内容など6点の明示を求める方針を示しました。明示を求めたのは、①労働者の募集を行う者の氏名または名称②住所(所在地)③連絡先④業務内容⑤就業場所⑥賃金ーの6点です。背景に求人メディアなどを悪用して犯罪実行者を募集する、いわゆる「闇バイト」をあげました。同省は6点の記載の有無から、違法情報かどうかの判断が容易になると指摘しています。求人企業などに対し、誤解を生じさせないよう6点に表示を呼びかけました。
 
●介護休業の対象に障害児・医療的ケア児を明記
 厚生労働省は1月 28 日、介護休業制度における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」を見直す案をまとめました。現行の判断基準が主に高齢者介護を念頭にしており、子に障害がある場合などで解釈が難しいとの指摘を踏まえ、見直しを行いました。新たな判断基準では、常時介護を必要とする対象に「障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む」を明記しました。同省は、改正育児・介護休業法が施行される令和7年4月1日を目途に運用をめざすとしています。
 
●外国人労働者数 230 万人で過去最多
 厚生労働省は1月 31 日、令和6年 10 月末時点 における外国人雇用状況を公表しました。外国人労働者数は 230 万 2,587 人で、届出が義務化された平成 19 年以降で過去最多を更新しました。対前年比で 25 万 3,912 人増と増加幅も過去最大となっています。増加率は 12.4 %で前年と同率でした。外国人を雇用する事業所数も 34 万 2,087 所と過去最多となりました。対前年比で2万 3,312 所増となり、増加率は 7.3 %と前年より 0.6 %ポイント増加しました。事業所数を規模別で見ると「30 人未満」規模の事業所が最多で 62.4 %を占めました。また、前年と比べていずれの事業所でも事業所数は増加していました。