使用者は、就業規則を作成した後、当該事業場に過半数労働組合がある場合にはその労働組合、過半数労働組合がない場合には過半数代表者の意見を聴かなければなりません(労働基準法第90条1項)。 1.過半数の母数 「過半数」とは、当該事業場で働く全ての労働者数の過半数とされていますので、正社員だけでなく契約社員、パートタイマーも労働者に含まれます。 例えば、パートタイマー就業規則を作成または変更する際であっても、労働基準法の意見聴取の対象は、パートタイマーの過半数代表者ではなく、全従業員の過半数代表者となります(パートタイム労働法では努力義務として、パートタイマーの過半数代表者から意見を聴取することが定められているに過ぎません)。 2.過半数代表者の適格性 就業規則の意見聴取の対象となる過半数労働者については、➀労働基準法第41条2号に規定する監督もしくは管理の地位にある者でないこと、②労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること、が必要です(労基則第6条の2第1項)。 実務上、中小企業の場合には、過半数を組織する労働組合はあまりありませんので、過半数代表者を選任しなければなりませんが、過半数代表者の選任手続をしっかりとやられている使用者がどれだけあるのかは疑問です。 もし例えば、中小企業の社長からある従業員に過半数代表者になってほしいと依頼した上、それ以上は何もせずに、ただ、36協定や就業規則に対する意見書に署名捺印してほしいと依頼し、その意見書を労働基準監督署長宛に届け出るという扱いですが、これでは適式に過半数代表者が選出されたとはいえません。 適式に選出されたとはいえない過半数代表者が記載した意見は無効であり、就業規則作成あるいは改訂における過半数代表者からの意見聴取をしていないという扱いになり、罰則(30万円以下の罰金)の対象となります(労働基準法第120号1号)。 なお、過半数代表者が適式に選出されたとはいえないことになると、労使協定も適式に締結されていないということになってしまい、例えば36協定では、違法に時間外労働、休日労働をさせたとして罰則の対象となり、変形労働制や事業場外のみなしを労使協定で導入している場合には、それが否定され、未払賃金が発生してしまうという事態も想定されます。 平成29年6月5日の労働政策審議会の「時間外労働の上限規制等について(建議)」の記載、また国会の附帯決議を踏まえ、今回の労働基準法施行規則の改正においては、過半数代表者の選任手続を定める労基則第6条の2第1項2号で、過半数代表者について、「使用者の意向に基づき選出されたものではないこと」が要求される旨が明記されました。また、労基則第6条の2第4項では、新たに「使用者は、過半数代表者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行することができるような必要な配慮を行わなければならない」という条項も追加されました。具体的には、「過半数代表者が労働者の意見集約等を行うにあたって必要となる事務機器(イントラネットや社内メールを含む)や事務スペースの提供を行うこと」とされています。 中小企業においては、今一度、過半数代表者の選出について現状を把握し、必要があれば、選出手続を適式な形に見直すことを推奨します。 3.意見の内容 労働基準法上、過半数代表者からの意見を聴取することだけが義務付けられており、過半数代表者に賛成してもらう、あるいは、同意してもらうことは必要とはされておりません。 4.書式 過半数代表者から意見を聴取する際の書式例は下のとおりです。
意 見 書 令和〇年〇月〇日 株式会社〇〇〇〇 代表取締役 〇〇〇〇 殿 〇〇事業場過半数代表者 〇 〇 〇 〇 ㊞ 令和△年△月△日付をもって意見を求められた就業規則について、以下のとおり、意見を提出します。 〇〇〇〇… (以下省略) 以 上
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