就業規則の作成義務について②

 
 

 3 常時10人以上の労働者を使用する使用者でない場合は


 上述の通り、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は、就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署長宛)に届け出ることが義務とされていますが、それに該当しない使用者は、就業規則を作成する必要はないのでしょうか。
 もちろん、法律上、就業規則を作成する義務はありませんが、その場合には、従業員の労働条件を個別の雇用契約書等で定めない限り、労働条件は明確とはなり難いのではないかと思います。
 使用者として、従業員の労働条件を明細にしておくべきことは言うまでもなく、将来、法的な紛争が起きたときに、労働条件が具体的に決まっていない、曖昧であるということが紛争を余計に拡大し、思わぬ大きなリスクを招来し、また、労務管理がなっていない会社であるとの印象を裁判所や労働局などの第三者機関に持たれてしまうことになってしまいます。
 また、従業員との個別の雇用契約で労働条件を設定している場合には、労働条件を変更する際に従業員から個別に同意を得なければなりませんが、就業規則の場合には、一定の条件はありますが、従業員から必ずしも同意を取らなくても、就業規則の変更によって労働条件を変更することが可能です。
 したがって、従業員の労働条件を明確に定めておくという意味からも、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」でない場合であっても、就業規則を定めておくことが良いかと思います。