~新たな化学物質規制の重要事項~
 
今般、国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類にのぼり、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれており、労働安全衛生法(安衛法)やこれに基づく政令・省令などの規制の対象となっていない物質に起因する労働災害も増えています。

そこで、労働安全衛生法施行令(安衛令)、労働安全衛生規則(安衛則)などの大規模な改正が行われ、その主要な改正規定が、令和6年4月1日から施行されることになりました(段階的に施行期日が設定され、すでに施行されている規定もあります)。

=改正の概要=(令和6年4月1日施行)
1.名称等を表示・通知すべき化学物質等の追加
 いわゆる表示対象物、通知対象物として、安衛令別表9に200を超える物質が追加されました。

2.化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任の義務化
 化学物質に係るリスクアセスメントに実施に関すること等の一定の事項を管理させるため「化学物質管理者」の選任の規定が創設されました。また、保護具に係る業務を担当させるため「保護具着用管理責任者」の選任の規定が創設されました。

3.ばく露の程度の低減等の規定の拡充(リスクアセスメント対象物健康診断の創設等)
 リスクアセスメント対象物による健康障害の防止のため、その防止に特化した健康診断(リスクアセスメント対象物健康診断)に関する規定が設けられました。

4.化学物質による労働災害が発生した事業場等における化学物質管理の改善措置の創設
 化学物質による労働災害が発生した等、事業場において化学物質の管理が適切に行われていない疑いがあるときの化学物質管理の改善措置の仕組みが設けられました。

5.通知事項の追加および含有率表示の適正化
 情報伝達の強化の一環として、通知事項の追加および含有率表示の適正化が図られました。

<参考>
□厚生労働省「労働安全衛生法の新たな化学物質規制」について
 
 
 
 
~育児休業取得状況の公表の義務化~
 
育児休業等の取得の状況として、「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を年1回公表することが義務付けられます。取得率の算定期間は、公表を行う日が属する事業年度(会計年度)の直前の事業年度です。自社の公式サイトなど、誰もが閲覧できる形で公表することとなっており、厚生労働省が運営するWEBサイトなど、「両立支援のひろば」の活用も推奨されています。

□厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
 
 
  

 
 
  ~給与のデジタル払いが可能に~
 
労働基準法第24条では、賃金は、通貨で、直接労働者、その全額を支払わなければないとされています。ただし、労働基準法施行規則において、企業は社員の同意を得た場合には、社員が指定する銀行や証券総合口座に対する振込等により賃金を支払うことが認められています。

キャッシュレス決済決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、今回省令が改正され、上記の銀行等への振込以外に、一定の要件を満たした場合には、資金移動業者の口座への資金支払(スマートフォンの決済アプリ等のアカウントに対しての給与振込)可能とすることとされました。

この省令は2023年4月より施行され、対象となる資金移動業者を審査した後、実際の運用が始まる見通しです。企業側でどのような対応が必要か、まだ具体的なイメージを持ちにくいですが、スマートフォンの決済アプリを給与受取に活用するニーズも、ますます高まっていくことが予想され、企業としても今後の動向に注意を払う必要がありそうです。

厚生労働省「資金移動業者業者の口座への賃金支払い(賃金のデジタル払い)について
 
 
 
 
 
 
 
 ~月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ~
 
2023年4月の労働基準法改正で、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、大企業・中小企業を問わず一律「50%」となります。

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率にういて、大企業は、2010年4月からすでに50%となっていました。一方、中小企業は、割増賃金率を50%とする改正の適用が猶予され、月60時間を超える時間外労働についても25%の割増賃金率を支払えばよいとされていました。

しかし、2023年4月1日以降は、中小企業も、月60時間の時間外労働については、割増賃金率が50%に統一されます。

<改正法施行後の割増賃金率の考え方>
・1カ月の時間外労働が60時間以下の場合→25%でよい
・60時間を超えた部分→50%となる

<参考サイト>
「厚生労働省 中小企業の割増賃金の引き上げ」