<雇用>
●民事上の個別労働紛争相談「いじめ」が約7万件
 厚生労働省は6月 30 日、令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況を公表しました。総合労働相談件数は 124 万 8,368 件となり、15 年連続で 100 万件を超えました。うち約7割(86 万件)は➀法制度の問い合わせで、②労働基準法等の違反の疑いがあるものは 19 万件、③民事上の個別労働紛争相談は 27 万件を占めました。民事上の個別労働紛争の相談で最も多くを占める内容は「いじめ・嫌がらせ」で、6万 9,932 件です。なお、労働施策総合推進法に基づくパワーハラスメントに関する相談件数は「いじめ・嫌がらせ」とは別に➀法制度の問い合わせ、②法違反に計上されていて、同省によると令和4年度は5万 840 件に及びました。
 
●定年再雇用の基本給引き下げで最高裁判決
 自動車学校に定年退職後も再雇用され勤務していた従業員が、業務の内容等が変わらないにもかかわらず基本給が定年前の4~5割まで引き下げられたことは旧労働契約法第 20 条の不合理な待遇差に当たるとして訴えていた裁判で、最高裁判所第一小法廷は7月 20 日、定年退職時の基本給等の6割を下回る部分は不合理と判断した原審を破棄しました。名古屋高裁に差し戻し、審理のやり直しを求めました。基本給の性質や支給する目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉の結果のみに着目して具体的な経緯を勘案しないまま、その一部を不合理とした原審の判断は、同条の解釈適用を誤っていると指摘しました。基本給の待遇差に関しても、その性質や目的、労使交渉の経緯などを踏まえる必要があるとの判断を示しました。
 
●パワハラ防止、小規模企業に対策の遅れ
 厚生労働省は7月 31 日、令和4年度雇用均等基本調査結果を公表しました。その企業調査によると、パワーハラスメントを防止するための対策に取り組んでいる企業は全体で 84.4 %になることがわかりました。労働者規模別で見ると 1,000 人以上は 100 %ですが、30 ~ 99 人で 90.9 %、10 ~ 29 人では 79.6 %となり、規模の小さい企業の取り組みの遅れが鮮明になっています。一方、具体的な対策内容(複数回答)は「就業規則・労働協約等の書面で方針を明確化し、周知している」(69.7 %)、「相談・苦情対応窓口を設置している」(63.3 %)などが6割以上を占めました。過去3年間にパワーハラスメントに関する相談実績または事案のあった企業は、約1割(11.2 )でした。調査は令和4年 10 月1日時点の状況について、常用労働者 10 人以上の 3,096 企業の回答を集計しました。