対象労働者の同意の撤回の手続きを明確化
 厚生労働省の労政審労働条件分科会は2月 14 日、裁量労働制の見直しを盛り込んだ省令案及び指針案、専門業務型裁量労働制(専門型)の対象業務を拡大する告示案を妥当と認め、労政審の答申としました。令和6年4月1日から施行される予定です。
 
~専門型の対象業務が20業務に拡大~
 専門型の対象業務は労働基準法施行規則(省令)と厚生労働大臣が指定する業務(告示)において19業務が定められているが、新たに表1の業務を告示に追加。令和6年4月以降は20業務となります。
 <表1>専門型に追加される対象業務
銀行または証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査または分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言をする業務
 
~専門型の労使協定事項に本人同意・撤回などを追加~
 専門型を導入する事業場は、労使協定において対象業務のほか、みなし労働時間、健康・福祉確保措置、苦情処理措置の内容などを定める必要があります。この協定事項に、表2の事項が追加されます。
 <表2>専門型に追加される協定事項
➀対象労働者の同意を得なければならないこと及び同意をしなかった労働者に対    する不利益取扱いの禁止
②➀の同意の撤回に関する手続
③➀の同意及びその撤回に関する労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後3年間保存すること
 
 
 ~企画型にも本人同意の撤回に関する手続を追加~
 企画業務型裁量労働制(企画型)を導入するには、労使委員会を設置し、対象業務や対象労働者の範囲などを委員の5分の4以上の多数決で決議する必要があります。決議を労働基準監督署に届出し、労働者本人の同意を得られれば導入できます。
 決議事項には、専門型と同様に「同意の撤回に関する手続」などを追加。申出先の部署等を明示するとともに、同意の撤回を理由とする不利益取扱いの禁止や、撤回後の処遇等をあらかじめ定めることが望ましいと指針で規定されます。撤回に関する労働者ごとの記録も求め、決議の有効期間中及び期間満了後3年間の保存を使用者に義務づけます。
 一方、労基署に行う対象労働者の労働時間の状況などの定期報告に関しては、初回は6ヵ月以内ごとに1回、その後は1年以内ごとに1回と緩和されます。
 
~労使委員会の役割を明確化~
 労使委員会についても省令や指針を改正して、より適切に役割を果たせるようにする。労使委員会の役割としては、制度導入時の決議のみならす、定期的な制度の実施状況に関する情報把握や調査審議、必要に応じた運用の改善や決議の見直し、苦情内容の把握などを指針で明確化されます。こうした役割を果たすため、省令で規定される労使委員会の運営規定に表3の事項を追加されます。
 <表3>労使委員会の運営規定に追加される事項
・対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項
・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
・開催制度を6ヵ月以内ごとに1回とすること
 
 
~健康・福祉確保措置は専門型・企画型ともに拡充~
 健康・福祉確保措置(表4参照)に関しては、措置の項目を追加。決議・協定するにあたっては、➀事業場における制度的な措置、②個々の対象労働者に対する措置の分類から、1つずつ以上の措置を実施することが望ましいとされます。
 <表4>健康・福祉確保措置
➀事業場における制度的な措置
 勤務間インターバルの確保深夜業の回数制限
 労働時間の上限措置、年次有給休暇の取得促進
 
②個々の対象労働者に対する措置
 一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導
 代償休日または特別な休暇の付与、健康診断の実施
 心とからだの健康問題についての相談窓口設置
 適切な部署への配置転換、産業医等による助言・指導等
 ※太字下線が令和6年4月から追加される措置。