<労働基準>
●9月上旬目途に精神障害の労災認定基準見直しへ
 厚生労働省は7月 12 日、心理的負荷による精神障害の認定基準案に関する意見募集を開始しました。令和4年度の精神障害に関する労災請求件数が前年度比 337 件増の 2,683 件と過去最多を更新するなか、迅速かつ適切な審査を行うため、9月上旬を目途に精神障害の労災認定基準を見直します。新たな認定基準では、発症前に起きた業務による出来事の心理的負荷の強度を評価する「業務による心理的負荷評価表」について、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を具体的出来事に追加するなどの見直しを行う予定です。
 
●休業4日以上の死傷者数の増加傾向続く
 厚生労働省は7月 27 日、令和4年の労働災害発生状況を労働政策審議会安全衛生分科会に報告しました。労働災害による令和4年の死亡者数は、前年から4人減の 774 人と着実に減少しました。事故別では「はさまれ・巻き込まれ」が 14.8 %減少しましたが、「墜落・転落」は 7.8 %増加しており、課題とされました。一方、休業4日以上の死傷者数は同 1,769 人増の 13 万 2,355 人と増加傾向が続き、平成 14 年以降では最多となりました。事故別に見ると「転倒」「動作の反動・無理な動作」による労働災害が増加していて、産業別では小売業や社会福祉施設の増加が目立ちました。なお、集計には新型コロナによる労働災害は含まれていません。
 
●石綿等の切断、除じん性能電動工具の使用認める
 厚生労働省の労政審安全衛生分科会は7月 27 日、石綿障害予防規則の一部を改正する省令案を妥当と認め、労政審の答申としました。令和6年4月1日から施行されます。石綿等の切断等の作業時は、粉じんが発散しないよう、石綿等の湿潤化の措置を講ずることが事業者に義務づけられています。湿潤化が著しく困難な場合は、除じん性能を有する電動工具の使用等が努力義務とされますが、これは電動工具の除じん性能の調査研究が不十分で、代替措置として義務づけることができなかった経緯があります。今般の実証試験の結果、除じん性能を有する電動工具の有効性が確認されたため、石綿等の湿潤化の措置と同等の措置として、除じん性能を有する電動工具の使用等を義務化します。作業内容に応じて、事業者が最適な粉じん発散防止措置を選択し、適切に講ずるよう求めます。