「生産性要件」による雇用調整助成金の加算を廃止
  厚生労働省は4月1日、令和5年度の雇用関係助成金等を一部改正する「雇用保険法施行規則等の一部改正する省令」を施行しました。
 
 <表1> 令和5年度に改正された雇用関係助成金
●労働移動支援助成金
●65歳超雇用推進助成金
●特定求職者雇用開発助成金
●トライアル雇用助成金
●地域雇用開発助成金
●両立支援等助成金
●人材確保等支援助成金
●キャリアアップ助成金
●人材開発支援助成金
●産業雇用安定助成金
●高年齢労働者処遇改善促進助成金
 
~一部は「賃上げ要件」による加算に切り替え~
 令和5年度に改正された雇用関係助成金は表1のとおりです。各種助成金のコースは新設・廃止。支給要件や助成額・率等の見直しのほか、事業所の生産性向上の取り組みを後押しする加算として、平成 28 年度から一部の助成金に導入された「生産性要件」が廃止されました。要件の確認や執行に長期間を要し、事務的な非効率が見られたことが廃止理由で、その一部は「賃上げ要件」に切り替えられます。
 賃上げ要件は、文字どおり、その雇用する労働者にかかる賃金を一定の割合以上で増額した事業主を対象に助成額や助成率を加算するもので、具体的には1年以内に5%以上の賃上げが要件となります。賃金改定前後3ヵ月の賃金総額を比較し、5%以上増加しているかを判断します。人材確保等支援助成金及び人材開発支援助成金の各コースに導入されました。
 
~新型コロナ関係の助成金・特例は一部廃止も~
 新型コロナ感染拡大に伴う助成コース、加算などの特例措置は一部が廃止されました。一方、在席型出向により雇用を維持する事業主を助成した産業雇用安定助成金は「雇用維持支援コース」と名称を改め存続となります。両立支援等助成金の3コースも令和5年度末まで(母性健康管理措置による休暇取得支援コースは令和5年9月末まで)に延長されました(表2参照)。
 
 <表2>新型コロナ関係の助成金・特例等
廃止●トライアル雇用助成金「新型コロナウイルス感染症対応トライアル
 コース助成金」
●労働移動支援助成金「早期雇入れ支援コース」の優遇助成
●両立支援等助成金「新型コロナウイルス感染症小学校休業等対応コ
 ース助成金」
延長
●産業雇用安定助成金「雇用維持支援コース」
●両立支援等助成金
・「介護離職防止支援コース助成金」(新型コロナウイルス感染症対
  応特例)
・「新型コロナウイルス感染症に係る育児休業等支援コース助成金」
・「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得    
  支援コース助成金」
 
 
~両立支援等助成金に「情報公表加算」を新設~
 このほか、各種助成金の主だった改正事項を見ていきますと、両立支援等助成金の「出生時両立支援コース助成金」と「育児休暇等支援コース助成金」には、育児休業等に関する情報公表加算を新設されます。育児休業等の取得状況を厚生労働省のホームページ「両立支援のひろば」で公開した場合に助成額を加算します。
 また、「介護離職防止支援コース助成金」については、個別通知・環境整備加算などを新設されます。令和4年4月から事業主に義務づけられた妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別通知や、育児休業等を取得しやすい雇用環境整備のように、対象労働者に対して介護休業や介護休業給付等に関する個別通知を行い、仕事と介護を両立しやすい雇用環境整備に取り組んだ場合を加算対象とされます。
   他方で、人材開発支援助成金は特定訓練コース、一般訓練コース、特別育成訓練コースを統合し、「人材育成支援コース」に変更。コースごとの手続が不要となり、利用しやすくなります。