令和6年4月から契約時の労働条件明示事項を追加
 厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会は2月 14 日、労働基準法施行規則の一部を改正する省令案等を妥当と認め、労政審の答申としました。労働契約締結時の労働条件明示事項を追加し、労働契約の明確化を図るとともに、無期転換ルールの適切な活用を促す見直しも行われます。施行は令和6年4月1日の予定です。

~就業の場所及び業務の「変更の範囲」を明示~
 労働契約の締結時に使用者が明示しなければならない労働条件について、令和6年4月から新たに追加される事項は表1の通りです。いずれも書面の交付による明示事項とされます。
 
 <表1>追加される労働条件明示事項
・就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲
・通算契約期間または有期労働契約の更新回数
 
 これまでも「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」は明示事項ではありますが、雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足りると解釈されてきました。将来にわたっての「変更の報酬」を明示させることで、労働者はキャリア形成やワークライフバランスがしやすくなり、使用者は特定された勤務地や職務を志向する優秀な人材を確保しやすくなるものと考えられます。
 「変更の範囲」の具体的な明示方法は、就業の場所や従事すべき業務が限定されている場合にはその具体的な場所、業務の範囲を示すことになります。一方で、特に就業の場所や業務に明確な限定がない場合は、例えば「会社の定める事業所」「会社の指示する業務」などと明示することが考えられます。

~有期労働契約を締結する場合の明示事項を追加~
 通算契約期間または有期労働契約の更新回数については、労働者と期間の定めのある労働契約を締結する場合の明示事項となります。更新上限の有無や回数などを労使間であらかじめ確認することで、労働契約法第18条の無期転換ルールに関するトラブルを未然に防止するのがねらいです。

~契約更新時の上限新設等には使用者に説明義務~
 有期労働契約の更新上限に関しては、同様に告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件)も改正されます。使用者が契約締結後、契約の変更や更新に際して、新たに契約通算期間または有期労働契約の更新回数の上限を設けたり、当初の通算契約期間を短縮、または更新回数の上限を引き下げようとしたりするときは、あらかじめその理由を労働者に説明しなければなりません。令和6年4月1日の施行予定です。
 
~無期転換申込権が発生する契約時に明示事項新設~
 労働者に無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新時において、使用者が明示しなければならない労働条件も表2の事項が追加されます。
 
  <表2>追加される労働条件明示事項
・無期転換申込みに関する事項
・無期転換後の労働条件
  無期転換申込みに関する事項は、労働者が無期転換申込権を行使する際の申出先や申込方法などが想定されます。書面の交付によって明示します。
 無期転換後の労働条件については、労働契約法上、別段の定め(労働契約、就業規則、個々の労働契約)をすることで、期間の定め以外の労働条件も変更することができます。労働者にとっては、無期転換後の労働条件が不明確では権利を行使しにくいことから、契約更新時の明示事項に追加されます。なお、期間の定めのほか、賃金や労働時間など、書面で明示するとされている事項は、書面の交付を求めます。
 
 ~転換後の労働条件に関して使用者に説明努力義務~
 無期転換後の労働条件に関しては、パート・有期労働法に基づく「同一労働同一賃金」の対象にはなりませんが、労働契約法により就業の実態に応じて待遇の均衡を考慮することが使用者に求められています(法第3条第2項)。そうした均衡を考慮した事項について、労働者に説明する努力義務を使用者に課するよう告示を改正。令和6年4月1日から施行されます。